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無垢材と集成材4

 
 終わりに
 無垢材と集成材どちらを選択したらよい?

 時間ある時に少しずつ下書きしていたものの
 
 論点が散漫になり
 
 読み返すと『何を言いたいのだ』(怒)という文章
 
 そんな訳でなかなか綴ることが・・・
 
 
 

 
 『建築の工法や材料で完璧なものはありません。
 その様なものがあれば皆が採用します。
 その長所と短所を知ることにより選択すべきです。
 得てして長所ばかり宣伝しているものは、
 採用されたい為だけのものであったりもします。
 選択に迷う時は、短所をきちんと説明出来ているものを採用した方が
 無難である場合もあります。』

 と持論で
 建て主さんに最初に説明することがあります。

 今回の提言は、建物を造る上で総合的に鑑みなければ
 その結論を導き至る事が難しく 
 材だけの比較では
 『建て主の嗜好により お好みで選択して下さい。』と成らざるを得ないでしょう。
 
 
 
 
 
 今までの事を簡略にまとめてみます。
 無垢材にグリン材、人工乾燥材、天然乾燥材と三種類ある為
 集成材との比較対象が散漫し
 何を言わんとするかよく分からなくなってしまった事を踏まえ
 集成材の目指そうとする方向性と同方向の人工乾燥材との比較を主とします。
 天然乾燥材の事は、後で述べるとし
 まず使用される事のないグリン材について
   しいて言うならば、安価・・・その位しか思いつかない
   揶揄で 建物建てながら天然急速乾燥 狂いも割れも一際です。 
 
 ○集成材と人工乾燥材
  どちらも材の強さと安定性(狂い、割れを少なく)を求め
  木の本来持つ味を犠牲にしているという点で 同方向性と思われます。
  (材の安定性が主で、強さはおまけの様な気もしますが・・・)
 
  ・材コスト
   同種材とし 規格品の場合   無垢材<集成材
           長尺・特寸の場合 無垢材>集成材
  ・施工難易度
   基本は、材木なので同等であるものの
   無垢の場合、材としての欠点(節等)・背割れ等がある為
   適正に本来の材の効力を発揮させる上での施工難度は、
   無垢材の方が高いと思われます。
  ・耐久性
   同材として木材自体は同等 違いは、接着剤によるもの。
   黒糊は、実績があるのでさほど問題視することはないと思われます。
   白糊に関しては、実績がないのでその分の不安要素は残りますが
   接着剤には、使用環境の規定があり
   そちらの環境を維持可能な建物とすることの方が大切ではないかと思います。
   又、接着剤の種類の相違はあるものの
   合板系を主とした構造体(2×4等)の実績から
   接着剤を用いたものが直ちに耐久性が劣ると判断することは
   愚考ではないかと思われます。
   終局は、好むか、好まざるか になるのでしょうが・・・
  ・危険性
   集成材の接着剤は、危険なものが少ないと認識して下さい。
   その点に関しては、無垢材の方が安全率からみると高いでしょう。
  ・仕上げ(見た目)
   お好みで 
   当方、機能美からするとあまり意識したことがないので・・・
  ・架構(構造的に)
   ここでは、人工乾燥により材の粘りを犠牲にしているのではないか
   と思われる事象から伝統工法の様な柔構造の様な架構を除外します。
      -なぜ 除外するのか?-
       強さを強さで評価する主流の構造力学(許容応力度計算)の方向性と
       合致する材が人工乾燥材である様に思える為です。
   
   架構において継ぎ手は、弱点となる為
   長尺材を使い易い点から集成材の方は設計難度が低く
   定尺を使用した無垢材の場合
   継ぎ手位置が限定される為、設計難度は高いと思われます。
   材の信頼性から見ると
   一般プレカット+金物でなく、金物+ドリフトピン(俗に金物工法)で
   無垢材を認めない工法が多い点から集成材の方が材の信頼性が高いと
   推察する事も出来るかと思います。
      (無垢材よりも集成材の方が材質の信頼性が高いという意味です
       どちらも脆性部材であることに変わりなく  
       大きな力を少ない箇所で負担する架構は注意が必要かもしれません。)
   強度については、数値的に集成材の方が高い数値に成る傾向がありますが
   撓み・クリープ・その他に対する設計配慮が大切で
   どちらが優れているとはならないと思います。

   クレームを嫌う工務店やHMが集成材を多用する訳がよく分かりますよね。
 
 ○天然乾燥材について
  木の本来持つ味、欠点も含めて好きな方にお勧め
   勝手な思い込みで
    壁は湿式真壁、
    柱・梁表し、
    大工さんが墨付けして仕口・継ぎ手を手加工
    金物を可能な限り無くし、込み栓と貫で
    正に伝統工法 柔構造 に使用すべき材ではないかと・・・
   と考えると
   見た目・材の太さ・手間 全てにおいて
   コスト面で高い方向性を持つと思われます。
 
   材の粘りとは、接合部においてある部分がめり込み
   その部分が崩壊に至るまでに大きな変形性能を有すること指すと思われます。
   天然乾燥材は、その様な特性を発揮させる材であるような気がします。
   もちろん普通の工法にも使用しても構わないと思いますが・・・
 
  ○おわりに
   最初にも述べたように
   好みで何を選択されても構わないと思います。
   (グリン材の選択は、ないものとし)
   選択したその材の長所を最大限いかした建物を目指すことが大切で
   予算と設計と施工、
   ひとつ欠くことにより大切なものが失われることは避けたいものです。
 
   建物を建てる上で
   まずは、材と構造を加味考慮した設計からが基本ではないかと思われます。

 
 
 おまけで・・・凡人建築士の戯れ言?
 
 伝統工法について
  当方では、建基法の構造仕様規定の安全担保のみで
  それ以上の変形性能による検証は出来ないので
  その様な設計をされている方は、どの様な方法で安全を担保しているのだろうと・・・
  
  現在、盛んに実大実験や研究が行われているので
  もう少し時間が経過すれば、当方の様な凡人建築士に
  可能な導きが示されると思われますが・・・・

  伝統工法とは、金物を極力使用しない木組みにより
  構成される架構を有するものがひとつの条件と推察しています。
  木組みによる接合部の多くは、主に引張力が小さいことから
  鉛直・水平剛性 共に小さいもので構成され
  接合部が破壊することなく建物が変形する架構ではないかと思います。
  例えれば、終局状態が二階建ての通し柱が折れてしまう様な変形となっても
  潰れることなく空間を維持可能な能力を有するものではないかと・・・

  
  現在主流の許容応力度計算は、理論上の弾性域での計算であり
  耐震性を上げる方向性は、総合的に剛性(強度)を上げる方法のみで
  伝統工法をこの道筋に乗せ、金物使用無しとするならば
  その構造計算上での耐震性の高い建物を望むことは難儀ではないかと思います。
  そこで塑性域での変形性能の検証?・・・保有耐力?限界耐力?
  をした方が良いと思うのですが・・・凡人建築士にはよく判らない分野
                            (勉強不足を否めない(泣))
  
  伝統工法を建基法で充分とするか、否かの違いですが
  当方、後者と考える為
  その様な検証した方がより安全では? と思う次第です。

    今までの経験した地震の中で伝統工法による構造体が健全
    或いは、修復可能な変形で納まったという事例を知りません。
    この事実を踏まえ 
    伝統工法の仕様がどうあるべきかの道筋を早期に示されることを望みます。
    勘ぐれば、見せかけだけ感を否めないのは当方だけですかね?
 
 
 変形について少し
  木は、脆性部材です。
  又、木の接合部の弱点である引張力に対する脆弱性は、否めません。
  その様な弱点を補う強度と靱性を担保させる為に金物を使用しています。
      (俗に当方が用いる強度とは、理論上の弾性域の許容値)
  木構造の基本は、耐力壁が壊れる前にその架構が壊れない事
      (壊れるという事は、元に戻らない事を意味し、
       構造力学では塑性域の変形をしているという意味合いです)
  逆に言うと剛性の高い耐力壁は、
  接合部を壊しやすい危険性があるとも言えます。
  
  変形には、弾性域と塑性域
  簡単に言えば、元に戻る変形と戻らない変形があります。
      (外力と変位の理論上の関係は、弾性域では比例関係 塑性域では一定)
      
  伝統工法の期待する変形は、塑性域での変形であり
  耐力壁が徐々に壊れ、接合材がめり込みながら
  一定の耐力を維持し変形する能力に期待していると思います。
      (この変形状態は、素人目には壊れたとしか写らないと思いますが
       建基法は、壊れることを許容していますので法的には問題ないのです。
       但し、倒壊することは許容していませんので悪しからず。)

  この接合部のある程度の耐力を維持し、めり込みながら変形する能力が
  木が柔らかいというイメージを持たせる理由のひとつかもしれません。
  又、大工さんが手間を掛けて手刻み が良質とする事が相まって
  建物全体の強さに繋がるというイメージもあるかと思われます。
 
  但し、手刻み加工が全く強さに関係ないとは思いませんが
  木の接合部の特に引張力をどの様に捉えるかにより 
  耐震性が左右される事を忘れてはならないと思います。
      (プレカットと同様の仕口や継ぎ手を手刻み加工
       梁幅4寸と同寸の通し柱に雇い系の仕口・・・・等々
       見せかけ感だけになっていませんか?・・・と思ふ)
  
  色々な推測は可能なものの
  構造力学を少しだけかじった意匠屋には
  鉛直構面が平行四辺形に変形した時に水平構面がどの様に変形し
  どの様な割合で力が加わるのか見当もつきませんので
  伝統工法の建物は、当方では見せかけは作れても
  力学的な理論上の安全検証は出来ない事は確かです。
  
  もう一つよく耳にすることで
  伝統工法は、石場建て
  簡単に言えば基礎の上に乗っているだけなので
  現在の建基法によるアンカーボルトで基礎と緊結する事が良くないのでは?
  との見解を聞くことがあります。
 
  確かに基礎と緊結しているのだから
  地震力がダイレクトに伝わる為、
  基礎からズレ落ちないだけの幅さえ確保可能であれば
  無しの方が良いのではないかとも思ったりしますが・・・

 
   
  ある時、木構造を牽引している先生の講演会で
  建物のポテンシャルエネルギーの話
     当方、構造の専門家ではないので簡単な講演話しか理解出来ませんが・・・
     高校時代、物理か何かで仕事量とかエネルギーとか学びましたよね
     単純に言えば地震力より建物の吸収可能な力が大きければ建物が壊れないので
     どの様な方法で吸収すると効果が高いかという話
 
 
  単純に吸収力の結論からすると
  ロッキング>滑り>塑性化 の順
     ロッキング : 片方が浮き上がりながら
     滑り : 建物全体が移動しながら
     塑性化 : 塑性域の変形しながら
 
  これをさらに単純化すると建物を基礎に緊結しない方が良い(拍手)・・・
  なんて事にはならないようです。
 
  最後に先生がまとめた事のひとつは、
  『Ds=0.40位の保有耐力設計ではロッキングも滑りも生じない』
  でした。
     再度、おことわり・・・当方構造の専門家でないので
     Ds:自重と同じ水平力を加力した時(その他の要素有り)
       どの程度弾性域で納まっているか否かの割合?を
       表した数値?・・・構造特性係数
       強いとされる壁式RCでDs=0.55が最高値らしい
 
  この結論から凡人建築士が感じたことは、
  弾性域での構造計算・・・
  許容応力度計算で
  相当の強さ(耐震等級3以上?)がなければ
  ロッキングや滑りを考えることは、意味を成さない。
 
  つまり基礎と緊結するか否かは、建物を強くしてからでしょう・・・と
 
  そして現時点で安全を担保できる可能性が高い方法は、
  許容応力度計算で耐震等級3以上ではないかという事でした。
 
 
 
 
 

| 建事一考::無垢材と集成材 | 10:53 AM | comments (0) | trackback (0) |

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