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直下率

 
 木造の架構のつづき

 
 
 
 『直下率の計算』
 
 とは言うものの
 
 何も知らない建て主にとっては、
 
 前記の文章では理解しがたいと思いますので感覚的なことを書いてみます。
 (すごく簡単な計算なので理解可能な方は前記を試すことをお勧めします。)
 
 
 
 
 

 
 住宅のプランの段階には 必ず平面図が有るはずなので
 一階平面図の上に重ねて下図が透ける紙(トレッシングペーパーなど)
 にコピーした二階平面図を
 重ね合わせて観て下さい。(逆でもOK)
  (総二階の場合の重ね合わせは簡単ですが
   一階より二階が小さい場合は、階段の位置を基準に重ね合わせると簡単です。)

 重ね合わせて何を観るかというと
 基本となる重要度から
  ① 二階外壁下に一階の壁の有無
  ②  二階出入隅柱下に一階の柱の有無
  ③ 二階室(部屋の組み合わせと分割)の四隅柱下に一階の柱の有無
  ④ 上記の壁と続きますが これ以降は、専門分野なので省略
 を観ます。
 総二階の場合は、①と②は有りとなる可能性が高いはずです。
 
 一階より二階が小さい場合
 特に二階外壁下が全て一階内壁となる場合は、
 危険側に振れる要因が増すことの認識が大切です。
  
 ① 壁の直下率は60%以上ですが
   外壁の場合は、目標値70%以上としておかないと
    内壁を含めた時に60%に届かなくなる可能性があります。
   直下率70%以上とは、二階が長方形平面の場合
   三辺全長の下全てに一階壁が有る
   若しくは、ほぼ全ての辺の全長に一階壁が有るに近い状態になるので
   重ね合わせた時の観た目の感覚での判断で構わないと思います。
   又、二階外壁の隅部が一階の部屋内(部屋の中央など)の場合は、
   よほど巧みな構造計画でないと
   直下率を満足することは難しくなる傾向と思われるので
   危険側の要因が増します。
   
 ② ①を満足すると自ずと有りの傾向が大になるはずです。
   一部でも無い場合は、上記と同様でない限り
   平面計画を再考した方が良いかもしれません。
   
 ③ 二階室は、単室、複数室、室の分割を指します。
    最低限外壁一辺を含み8~10畳程度までの
   長方形(各辺二間以下が望ましい)で四隅柱のある
    『田・日・目』の字(複合と文字の回転も含め)
    となるような長方形の構成を観ます。
     (大概は、各居室と廊下・階段で物入れ等をどちらかに含める程度で
     構成されると思います)
    
   この長方形の構成を観ることが難儀と思いますので補足します。
   基本は、最大(外壁)長方形から段々に小さな長方形に分割です。
   大部分が壁となる辺(壁の延長線を含む)の組み合わせで長方形となる
   四隅柱が頂点になり得ることに着目し
   対面する外壁間を分割する直線(壁の部分の割合が大きい)で
   頂点を含む数が最大で最長となる線分を見つけます。
   プランの形状によりその線分が複数ある場合もありますが
   複数の室があるプランの場合、最低限対面する外壁間を分割する線分が
   1本なければ 極端にプランが小さいか 大きい 
   又は、基本を無視していると推察されます。
   その後は、頂点を含む数が多い順かつ線分(壁)の長さ順で
   線分を見つけ分割してゆくのですが
   原則 その線分は、接する線分より短いです。
    (長方形の大小に関わらず四隅柱が有るも大前提)
  
   そしてその長方形の二階四隅柱下に一階の柱があるかを観ます。
    (架構の基本は、四本の柱と四本の梁で構成される直方体なので
     全て有りでなければならないと考えます。)
    
 ④ 重ね合わせて二階内壁下に一階壁があるかを観ます。
   内壁で階段の廻り部分は、大なり小なり重なりがあるはずです。
   それすら無いと言う事は、よほどオープンなプランであるか
   階段下を含み他用途の室としているはずです。
   階段と吹き抜けは、平面的な開口部となる為
   少なくとも隅部全てに柱が有ることが基本で
   全く壁が無いは、構造的に危険側に振れている可能性が高くなります。
   何を観るかは、③で区画した線分の下にどの位一階壁があるかですが
   長い線分程 重要度が高い方向性となることを加味し
   その線分に一階が一致するかどうか見て下さい。
 
   判断基準は、見た目の感覚で良いでしょう。
   ここまで来ると構造的に考えているかどうかで重複が両極端になるはずです。

 
   
 補足で
  構造的に考察されたプランは、一,二階共整然と室が配置されます。
  (『間崩れ』という 一、二階の壁が僅かずれることが無いも一例)
  これは、立面を見た時にも同様です。
  その理由は、省略し
  二階開口部下の一階は、壁 若しくは同開口サイズ以下の開口部が
  原則となるので立面での開口部は自ずと整然とする事となります。
   (上から見た時に一階と二階の開口位置の重複が0%か100%も
    ケースバイケースで有り)
 
 以上 意匠屋の個人的見解の一例で見た目の感覚的なことを書いてみました。
 あくまで
 そうしなければならないではなく そうする事が望ましいです。
 
 
 直下率の様な検討方法は、
 危険側の要因を可能な限り排除し 架構の基本に立ち返る手段と考えられます。
 危険側要因を持つ計画が全てダメではなく 
 そのことに伴う構造力学的考察と構造計算が必要とされるだけなのですが
 雑誌も出版されたり 
 この様な検討があったりすると
 架構設計に携わる者の構造的認識が低いと推察しても
 あながち的外れではない様な気がします。
 
 最近は、住宅の間取りの組み合わせでパースまで自動で作成してしまう
 安価な一般向けソフトも有り
 単に建て主が作成した部屋の組み合わせのプランで

 『住宅が出来ました』 は、

 現在の確認審査方法を鑑みれば

 『大丈夫ですか?』

 と問いたくなる気持ちを否めません。
 
 
 木造の架構は、鉛直方向だけの荷重ならば
 極端な話 何でも良いかな?
 一番は、
 地震や風のような水平力が加わった時 どうなのか 
 が大切で
 その大切さのひとつが 架構の基本ではないかと考えます。
 
 一般住宅の場合、架構の基本に立ち返る計画変更や代替案は
 建て主がプランに余程の執着 若しくは無茶がない限りあるはずです。
 その様な繰り返しによりプランを進めることが
 良い架構の住宅を手に入れる手段なのです。
 
 
 昨今は、
 時間と手間を費やすことを好まない業界になりつつあり
 
 『住宅を売る』ということが先行し
 『耐震等級3です』
 『構造計算しています』という謳い文句 
 
 安全を手に入れたいと思う建て主をターゲットとするならば
 売る側にとって安全をアピールできる格好な言葉のひとつであることなのですが
 安全とは、それだけではないという認識が必要な時かもしれません。
 
 
 
 
 当方は、今までの設計で直下率の計算したことがありません。
 当方のような意匠屋でも構造的に考えれば
 平面計画の段階で考えなければならない重要なことであり
 あえて計算する必要性があるか? という疑問を抱きます。
 (自身で平面計画 → 伏せ図を描いているからかもしれないですが)
 
 
 
 そこで勝手な個人的推論で
 
 直下率の検討は、
 伏せ図がない計画の場合など プレカット屋さんが図面を作成する場合
  (四号建物は、確認申請図には伏せ図必要なし
   かつ プレカット屋さんは材木屋で構造設計者は多くない)
 伏せ図を描く上での規則性を確保する方法のひとつとし
 導き出されたように思います。
 本質は、受け梁の二次、三次等 
 次数が多くなれば撓みが大きくなり
 単梁での検討では思わぬクレームを発生させる要因が
 隠されている。
  (一般的構造計算ソフトは、単梁の撓みの検討だけと思う)
 又、その様なケース場合は、コスト優先=材積を少なく という作用による
 クレームの助長を防ぐ為なのかもしれません。
 しかし、多様な平面計画に追従する
 架構の規則性不足を補う上での検討事項としては 耐震性を含め
 必要なことのひとつと推察します。
 
 
 おまけ
  直下率と間接的に関係するかな?
  
  二階建ての二階小屋組の梁の架け方で
  二階床梁サイズを大きくしたくないとか 諸々なことから
   (諸々なこと → 実は大切)
  当方、二階柱下に一階柱がない柱は、二階柱がないものとし
  梁断面を決定し伏せ図を作成することがよくあります。
   (大概 現場でサイズが大きすぎるから小さくしても良いかと
    施工者から提案があるのですが拒否・・・当たり前)
  この手法 伏せ図を作成する方ならば行っていると思っていましたが
  少数派なのかもしれません。
 
  これは、
  信州木造塾の講師 山辺先生が仰っていた
  『その階の荷重は、その階で処理する。』の言葉
  そのものと感じています。
 

  この様な設計手法
  材積が増えるので材木内訳では工事費増なのですが
  設計と施工が分離の場合
  総工事費に余程の無設計がない限り
  影響しないとつけ加えて・・・・おまけ終わり


 
 
 読み返してみると大分長い文章
 時間も大きく費やし
 さて次は、何を書こうか・・・(疲)
 
 
 
 
 
 
 

| 建事一考 | 07:56 PM | comments (1) | trackback (0) |

コメント

大変参考になりました。
築5年弱の建売住宅に住んでいますが、2階外壁に大きな亀裂(0.85mm)が3本、小さな亀裂2本が発生しています。
亀裂が発生してる2階部分はキッチンとダイニングの角部屋に当たり、3面の壁面すべてにそれぞれ亀裂があります。
2階キッチンの外壁は、1階外壁の内側に1m弱入っていて直下壁ではありません。
重い食器棚や冷蔵庫がキッチン外壁部分に置かれてますが、1階で支える壁が無いということです。

直下率を某企業に計算してもらったところ36%で、阪神淡路地震クラスの0.75
倍で家屋倒壊というシミュレーションが出ました。

こちらの文章内容を拝見し非常に怖くなった次第ですが、現在の家は建て替えが最善の方法でしょうか。
御教授いただければ幸いに存じます。

| 迷える者 | EMAIL | URL | 2017/01/22 04:34 PM | v.Zol366 |


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